「不正実行者の心理」

「貧すれば鈍する」が現実ともいえますが、理想は「武士は食わねど高楊枝」という方もいるでしょう。
 経済的に厳しい状況になると、人は適切な価値判断ができなくなり、欲求の赴くままに善を忘れる傾向にあります。 
 一方で、いくら経済的に厳しくても、気品を尊ぶ人もいます。
 人の強さと弱さとが対比される二つの諺です。
 様々な不正事例を見るにつけ、不正実行犯は両者の葛藤の中にいたと思うのです。
 その不正実行者は、経済的に裕福であれば、罪を犯さなかったのでしょう。いや、必ずしもそうではないにしても、限りなく犯罪者となる可能性は低かったことでしょう。
 「不正に手を染めてしまった普段は真面目な人間は、被害を受けた会社と同様に不幸である。」
 この言葉の中には、不正実行者の後悔の念と共に、会社がその不正を事前に防止できなかったという会社側の反省の念も含まれます。
 不正の芽を事前に摘むこと。
 これが不正による被害を少なくすると共に、不正実行者を排出しない最善の策なのです。

中里拓哉(なかざと・たくや)
1969年東京都江戸川区生まれ
1988年都立両国高校卒業
1992年早稲田大学教育学部卒業、旧公認会計士2次試験合格
1996年旧公認会計士三次試験合格、公認会計士登録
【 職歴
 安田莊助税理士事務所(現、仰星税理士法人)にて法人・個人の税務業務に従事し、東京赤坂監査法人勤務(現、仰星監査法人)にて金融商品取引法、会社法等の法定監査業務、株式公開支援業務、内部統制構築支援業務に従事した後、中里会計事務所設立。2002年日本公認会計士協会東京会・経営委員会委員長。
現在、中里会計事務所にて、主に中堅・中小規模会社の監査関連業務、会計指導業務、税務業務等を行うと共に、不正事例研究会を主催し、不正の防止・発見策の提言を行う。
TAC株式会社及びJAマスターコース、JA内部監査士講習会の他、種々の研修業務にも従事し、ユーモアのある講演で定評がある。
著書
「資格ガイドシリーズ 50.公認会計士」中里拓哉/著 経林書房 2004年9月
「いまこそなりたい公認会計士」中里拓哉著 中央経済社 2009年5月
「公認会計士試験「監査論セレクト30題」共著(著者代表中里拓哉)中央経済社 2013年6月
「中堅・中小組織の内部監査」共著(近江正幸・中里拓哉)白桃書房 2014年10月
「財務諸表監査の実務」共著(著者代表中里拓哉)中央経済社 2015年4月
(他、会計関連誌への出稿多数)